ベストバウト
2007/03/18まぐまぐから発行された無料メールマガジン「21のガラクタ」より。
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先日のことです。あるパーティー会場で
プロデビュー以来負けが続いている選手とこんな話をしました
選手: 「今はとにかく勝ちたいです。」
私 : 「別に勝たなくてもいいよ」
選手: 「え!」
私 : 「全力を尽くせばいいんだよ」
選手: 「だけど…どうしても勝ちたいんです」
彼はうつむき小さな声でそう言いました
私は用意されているイスに彼と並んですわり話を続けました
私:そりゃそうだ。勝ちたくないやつなんか一人もいるわけが無いよ、
だけどね…
私は彼に自分の中のベストバウトの話をしていました。
僕がまだ黄色帯だった頃にね黒帯の先輩が試合に出たんだ
もちろん道場内で最強
雲の上の存在だし憧れの対象でもあった
その先輩が負ける姿なんか想像できなかった
だけど、負けた
『上には上がいる』それをまざまざと見ることになったよ
試合はトーナメント方式で1試合3分
フルコンタクト空手の試合だけれどスーパーセーフをつけた上から顔面ぶん殴りあうルールでね。フックがあご先を振りぬけた次の瞬間白目をむいてひざから崩れる先輩がいたんだ
試合場(ロープのないリング)のすぐ脇で応援していたからはっきり覚えているよ
3秒で技あり6秒で1本負けルールの中ですぐさま起き上がり開始線にもどり試合続行
明らかに相手のほうが実力が上だと会場中の誰もが感じていたと思う
そして2度目のダウン
今度もすぐに起き上がり開始線に立つんだけど相手の開始線に立ってしまうんだよ。キックでもたまにセコンドを間違えてしまうことがあるだろう
あれと同じ、ダメージがとても深刻だってことさ。
そんな先輩の姿を見るのが苦しいとだとか信じられないとか考えるまもなく
試合続行
終始相手のペースで試合が運ばれ
そして試合終了
試合場から降りてくる先輩に同門の誰も声がかけられずにいたよ
そのとき俺が言った言葉が「お疲れ様でした」だった
そしたら
そこにいた誰もが「お疲れ様でした」そう叫んでいたよ
先輩は「試合に負けた」「勝負にも負けた」
だけど「自分自身には負けなかった」
拍手に混じって先輩の名前を叫んでいる奴が会場に何人かいたよ
負けたけど「かっこよかった」んだ
試合内容は一方的だったにもかかわらず「強さ」を証明したんだ
僕の記憶の中のベストバウトはその試合
20年くらい前の話さ
勝負は勝たなければ意味がない
確かにそのとうりです
しかし、勝たなければ何も残せないわけではないよ
俺は先輩が試合に勝った姿は覚えていないけれど
負けたあの試合のことだけはたぶん一生忘れないと思う
俺は勝ちにこだわって小さくまとまることに意味があるとは思わない
全力を出し切って負けた方が100倍かっこいいと信じている
それができないのは「勝つために全力を注いだ練習をしていないからだよ」
現在の君の課題は何?
まずはそれを真剣に考えるんだよ
そして、なぜそれが君の課題なのかを考えるんだよ
自分がどうしたいのかが見えてくるから
次はその課題をクリアするために不可欠なものが何なのか
どうすれば手に入れられるのか?
すでに同様のものを持っている選手やコーチがいるのかどうか?
思い切ってそれを聞いてみるのもいいと思う
真剣に考えた上での質問であり聞く相手を間違っていなければとても良いヒントになるはずだよ…
それに君の視点も向上しているから
練習自体に熱も入るはずだからね
『勝ちにこだわりなさい!』
だけど試合の結果を気にする必要はない
僕の話している意味がわかるかい?
勝ちにこだわった練習をしなさいということだよ
隣に座っていた選手のひざをぽんとたたいて私は席を立ちました
立ち上がった選手の顔に元気が戻りつつあることがわかりました
彼の今後に期待している中村です(^^)
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さて、何が何でも1勝したいと願う彼の気持ちは痛いほどわかります
それでも私は勝たなくて良いと話します
勝ちにこだわった稽古をすることこそ重要だと話しています
「覚えて忘れる」という言葉があります
試合中に覚えたことを思い出しているひまはありません
体に任せるしかありません。
つまり体の中には技がなければなりません
体を解放してあげる心がなければなりません
「心・技・体」
技の稽古を通じて心と体を向上させる事こそ重要だと話しているのです。
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選手の皆さんへ
試合場に自分のすべてを出し切ってきて欲しいと思います
そして、勝っても負けてもまた稽古に励みましょう(^^)
それでは、また
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